京都の旅を完璧にする宿「アンテルーム」と「サンク」

京都といえば、歴史と伝統。昔ながらの街並みや創業何百年の老舗、世界に誇れる寺院などを求めて世界中から旅人が訪れます。同時に京都は、新しいアートやカルチャーが次々と生まれる場所でもあります。


昨年4月にオープンした「HOTEL ANTEROOM(アンテルーム)KYOTO
は、そんな京都の「今」を発信するところ。常に変化していく京都の街や暮らしを身近に感じさせてくれる、全く新しいスタイルのホテルです。

開放感のあるエントランスから空間のつながったギャラリー。京都を中心に活躍するアーティストの作品が展示されるほか、イベントスペースとしても使われています。

古さと新しさの同居するこの建物は、築23年の学生寮をコンバージョン(用途転換)したもの。旅人のためのホテル機能と、暮らす人のためのレジデンス機能を併せ持つ施設で、昨年度のグッドデザイン賞も受賞しています。ホテル+アパートメントというのは、東京の人気ホテルCLASKAと同様の形態ですが、それもそのはず、HOTEL ANTEROOM KYOTOを手がけたのは、CLASKAを企画・設計・プロデュースした都市デザインシステム。京都では、ANTEROOMのほかに「ホテル カンラ 京都」も運営しています。
 
建物内のグラフィックはデザインファームUMA
のアートディレクター原田祐馬さんが手がけたもの。ANTEROOMのインテリアはムダを削ぎ落としてシンプルに徹することで、「今」の感覚を過不足なく表現することに成功していますが、そのカジュアルな雰囲気を「平凡なもの」に終わらせず「かっこよく」形にできた理由は、グラフィックひとつひとつにまでこだわったからこそ。

 
客室の家具はすべてオリジナル。華美でなく簡素でもない、ほどよいシンプルさとモダンなかっこよさが同居して、居心地のいい空間を作り上げています。パブリックスペース同様、各部屋にも若手アーティストの作品が飾られ、気に入ったものは購入も可能。好きなアートを自分の暮らしの中に持ち帰れる・・・そんなサービスも、ANTEROOMの特徴です。

広いテラスがあるテラスツインルーム。料金は時期にもよりますが、朝食付きで一室15,500円から。ほかに、シングルのスタンダード、ダブル、ツインがあり、シングルは朝食付きで7,000円から宿泊できます。

朝食は、併設のカフェ「ANTEROOM MEALS」で。

 
anteroomとは「次の間」や「待合室」を意味します。ここを訪れた旅人には「友人が集う場に遊びにきたような居心地のよさと、京都の街へ出るための支度をする場」を、ここに暮らす住人には「新しい刺激に満ちた日々を通じて次の出会いへとつながっていくような暮らしの場」を提供する、それがHOTEL ANTEROOMのあり方。広々としたラウンジのソファに座って新聞を読む住人が居たり、廊下やギャラリーに飾られたアートワークを眺める宿泊客が居たり。閉塞感のまるでないANTEROOMの空間で、旅行者と生活者が何の違和感もなく混ざり合っていました。

 

もう1つのおすすめホテルは「cinq petit chambre(サンク・プチ・シャンブル)」。京都の中心地、御幸町(ごこまち)三条に位置するこじんまりとした和モダンの町屋旅館です。
 

清潔で品のいい室内をほどよく照らす和紙の照明。光と陰の美しい調和が心を落ち着け、スタッフ自ら塗り上げた壁の風合いとともに、なんともいえない風情を作り出しています。
 
ふんわり焼き上げられたキッシュはcinq cafeの人気メニューのひとつ。しっかり食事したいときも、お茶だけのときも使いやすいカフェです。

 
1階は地元の人や観光客でいつもにぎわうcinq cafe(サンクカフェ)。その奥の階段を上がると宿泊者用の部屋が5室あるという、なかなか個性的な造りです。もとは120年間続く旅館だった建物を、経験豊かなスタッフの手で改装し、居心地のよいカフェ旅館として生まれ変わらせたのだといいます。

建物自体は長い年月を経てきたことを感じさせる味わい深さに満ちていますが、客室の調度品はシンプルかつモダンなデザイン。宿泊者の使い勝手を考えて選び抜かれたことが、一目で分かります。京都各所へのアクセスのよさとリーズナブルな価格(部屋のタイプやシーズンにもよりますが、10,800〜21,800円)も相まって口コミで評判を呼び、女性を中心に人気を集める宿です。

気配りは寝具にも反映され、創業170年の布団店「イワタ」の上質な布団が全室に使われています。最近は寝具にこだわる宿も増えてはいますが、ここまでリーズナブルな料金でそれを実現しているのは特筆に値します。サンクは立地のいいコンパクトな宿だけに、「ホテル内で終日くつろぐ」という過ごし方ではなく、市内をあちこち歩き回って「ゆっくり眠るための場所」となる場合がほとんど。だからこそ最上級の布団をしつらえて、快眠を提供してくれるのです。

 
cinq petit chambreの責任者、池尻繁さん。ホテル業界で長年かけて培った経験を活かしてサンクを作り上げ、ここに流れるカジュアルでアットホームな時間を演出しています。

そして、サンク最大の特長は、宿泊者とスタッフの関係性。密度の濃い至れり尽くせりの接客というよりは友達の家に遊びに来たかのようなちょうどいい距離感で、気負わない雰囲気があります。チェックインした後は京都の街をあちこち歩き、おみやげを買って荷物が増えたらまたサンクに戻る。1階のカフェでカフェクレームでも飲みながらしばし休憩し、また街へ繰り出す・・・たとえばそんな過ごし方がしっくりきます。「京都の拠点」として何度も訪れたくなる宿なのです。
 

よい宿に巡り会えたら、その旅は成功したも同然。あとは足の向くまま気の向くまま、京都の時間を満喫しましょう。

 
HOTEL ANTEROOM KYOTO
京都市南区東九条明田町7番
cinq petit chambre
京都市中京区御幸町通三条下ル海老屋町327
※いずれも駐車場はありません。車でお越しの方にはホテルのスタッフが近隣の駐車場を案内しますので、お気軽にお問い合わせください。

取材・文 山根かおり

企画も手がける編集ライター。利き酒師。クッキングインストラクター。おいしいもの、こだわりの人、すてきな場所、丁寧な手仕事を目にすると、「もっと多くの人に伝えたい」と思わずにはいられない。旅と食が好き。旅先で地元の人が利用する市場やスーパーで調味料や食材を買い込み、帰国してからその味を再現するのが目下の楽しみ。Culture Magazineでは、カメラマンの夫と共にFIAT的な世界観のモノやコトを探して伝えている。

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