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三千院と宝泉院 庭を眺め、時間に身を任せる京都のひととき。


神社やお寺を訪れて「御朱印」を集めるのがちょっとしたブームになるくらい、若い人たちの間でも社寺の魅力が見直されています。今回は、日本庭園や社寺に詳しい京都人もおすすめの宝泉院と三千院を訪ねて、大原へ足をのばしました。春夏秋冬、どの季節に訪れても満足できるお寺です。

宝泉院にある樹齢700年の五葉松。かつて高浜虚子が「大原や 無住の寺の 五葉の松」と詠んだ、
京都市内にある最も有名な松のひとつです。

見どころ満載の宝泉院へ!

まずは1012年に建立された宝泉院へ。ここ大原は天台宗の仏教が栄えた土地として知られ、宝泉院はその中でも中心的役割を果たした大原寺 勝林院の僧坊(寺院内にて僧侶が生活する宿舎)として古くより存在したお寺です。山門より入ると、この寺のシンボルともいえる樹齢700年の五葉松が迎えてくれます。

「額縁の庭園」は柱と柱の空間を額に見立てて鑑賞するという、なんとも趣深い庭。竹林の間から大原らしい里の風情も見渡せて、この庭が別名・盤桓(ばんかん、「立ち去りがたい」の意)園と称されるのも納得です。

赤い毛氈(もうせん)は庭の緑にも抹茶の緑にも映え、フォトジェニック。若狭屋末則の手作り和菓子とともにごゆっくりどうぞ。

歴史を感じさせる五葉松や美しい「額縁の庭園」を眺めながら、客殿にぐるりと敷かれた赤毛氈に座り、お抹茶をいただけるのも宝泉院の魅力。歴史も由緒もあるお寺ですが、緊張感は皆無。「どうぞごゆっくりおくつろぎください」というにこやかな言葉とともに出される抹茶と和菓子は心を落ち着け、時を忘れさせてくれます。

抹茶をゆっくり味わった後は、水琴窟(すいきんくつ)の音色にぜひ耳を傾けて。水琴窟とは手水鉢の近くの地中につくった空洞に水滴を落下させ、その際に発される音を反響させる日本庭園の装飾のひとつですが、話には聞いたことがあっても実際にその仕掛けを目にする機会はなかなかありません。しかも、宝泉院にあるのは二連式の珍しい水琴窟。竹筒に耳を当てると、日常では決して耳にすることのない、得も言われぬ澄んだ音色が聞こえてきます。

宝泉院境内南側の低地には、2005年に新たに作庭された「宝楽園」も。地球太古の創世に遡り、その原始の海を想像したという庭園です。決して広くはない敷地ですが、その中に大自然の営みが濃縮されて表現され、仏神の心の世界や躍動感を感じ取ることができます。力強い石組みと砂紋、四季折々の植栽も見事で、心ゆくまで回遊したい風情があります。

三千院で自然の美しさを実感!

見どころ満載の宝泉院をあとにして、三千院へ。皇子皇族が住職になられた「門跡寺院」としても知られ、長い歴史と高い寺格を誇る風光明媚なお寺です。国宝や指定文化財も多く、宝泉院と同様にこちらも見どころが多いのですが、とくに時間をかけて過ごしたいのが庭園です。

見事な青苔にスギ、ヒノキ、ヒバなどの立木がそびえ立つ様は、長い歳月を経てここにあり続ける自然の美しさ、趣深さを実感させてくれます。静寂と安らぎを与えてくれるその光景には、ただただ感服するばかりです。

園内には、あたたかい表情の地蔵様がちらほら。地蔵菩薩はとても慈悲深く、迷いの世界で人々を救うと伝えられ、そのためとくに子供たちの守護尊として信仰を集めているとか。

宝泉院〜三千院と探訪し、心がすっかり落ち着いてきた頃、最後に一風変わった見送りを受けました。三千院の庭園に棲みついていると思われる1匹の蛇が、苔の上を音もなくすべり現れたのです。蛇は吉兆といいますし、こんな出会いがあるのも自然豊かなお庭だからこそ。

宝泉院と三千院。京都に来たら再訪したい場所が、またひとつ増えました。

宝泉院 http://www.hosenin.net/
三千院 http://www.sanzenin.or.jp/

撮影 SHIge KIDOUE
取材・ 文 山根かおり