ゆっくり生きよう・にっこり走ろう

人にも環境にも自分にも優しくいきる。それがフィアットカルチャーです。

「ミモザの日」イタリアフェアで見つけたもうひとつの意味。

そこでは黄色いミモザの花を持つ人たちがまわりの景色に溶け込んでいました。ローマの街並みを思わせる淡いオレンジや黄色の建物。イタリアにちなんだ曲を奏でるストリートライブ。細部まで計算された創作物の集まりが、異国の空気感をつくり出しています。映画館やレストラン、大小さまざまなショップが一堂に会する複合施設「ラ チッタデッラ」で見た風景です。

イタリアのヒルタウンをモチーフにつくられたラ チッタデッラの一角。外国の雰囲気が手軽に楽しめる人気スポットです。

川崎駅から徒歩5分のその場所は、電車で訪れると突然の景色の変わり具合に驚かされます。日本の典型的な商店街の風情を残す銀柳街から道を隔てて反対側のすぐ近くに、石畳が敷かれた小さな脇道があります。ラ チッタデッラを貫くチネチッタ通りです。通りを入って少し先の噴水広場は、イタリアンフェア2015の一環として行われた女性のためのイベント「フェスタ デッラ ドンナ」で華やいでいました。

老若男女を問わず似合うミモザの花は曇り空も明るくします。その日も日中の最高気温は1ケタ台のどんよりした天気でしたが、噴水広場は白いFIAT 500(チンクエチェント) と赤いオープンカーのFIAT 500C が並べられ、そのまわりをミモザの花が取り囲み、なにやら楽しげな雰囲気です。

シチリア島から来たミュージシャンのライプパフォーマンス。本場の音楽で会場の異国情緒をさらに高めてくれました。

通りをゆく人の足取りを止めていたのはフィンガーペインティングのライブ。iPadの画面上を指でなぞって肖像画を描くのは、山岡セイコウさん。タブレット端末ひとつでポートレイトを描きます。1枚仕上げるのに要する時間は6時間ほど。その日は12時頃から描き始め、午後3時を回る頃には誰を描いているか特定できるぐらい出来ていました。それは、平塚らいてう(らいちょう)さんです。

電車の移動時間にiPodタッチで絵を描き始めたのがキカッケで、フィンガーペイントによるポートレイトにのめり込んでいったという山岡セイコウさん。「道具が他に要らないフィンガーペイントは敷居が低く、誰でも気軽に楽しめるのが魅力」とか。作品はご自身のオンライン アートギャラリーで公開しています。

フェミニズムやジェンダー関連の本で馴染み深いその人は、戦前戦後と女性の権利獲得のために生涯を捧げた活動家。性差別による抑圧が強かった時代に、多数派に迎合することなくペンの力で女性たちを鼓舞し、女性参政権運動をはじめとする女性の解放活動に尽力しました。

「ミモザの日」。男性から女性へ、あるいは女性から女性へ黄色い花を贈るその習慣は、バレンタインデーにも似ていますが、それよりもちょっと深いのです。第一次世界大戦前、過酷な労働と劣悪な環境での生活を強いられ多くの移民女性が命を落としたのをうけ、アメリカで女性労働者が婦人参政権を求めてデモを敢行。国連は1910年に3月8日を「国際女性デー」と制定。女性のために立ち上がった女性が、世界を少し変えました。平塚らいてうさんもそうした女性のひとり。明治19年生まれの彼女を今に伝える肖像はモノクロ写真ばかりですが、タブレットペインターの山岡セイコウさんは今回、自身初の試みとして、モノクロ写真をもとにカラー肖像画をつくるといいます。

午後4時30分。トークショーの始まりです。壇上にあがるのはFCAジャパン株式会社 マーケティング本部長のティツィアナ・アランプレセ氏。実はバレンタインとミモザの日の違いを話してくれたのも彼女。16歳の娘を持つ働く母です。ゲストとして、教育面における男女格差の改善に注力するルーム・トゥ・リード・ジャパン代表の松丸佳穂さんと、認定NPO法人JKSK 女性の活力を社会の活力に会長の木全ミツさんを招き、力強く生きる女性をテーマに話しました。

ティツィアナ氏は「ミモザの日は世界を良くするためのアクションを起こす日」と述べ、女性の労働環境や教育面の問題を提起しました。

ティツィアナ氏が、ミモザの日の由来について話し、今なお女性の労働環境が男性のそれに追いついていないことを指摘すると、松丸さんは「世界には字を読めない人が8億人いて、その2/3が女性と言われている」ことや、「字が読めないゆえに間違えた薬を子どもに飲ませてしまい、死に至らせる事故まで起こっている」ことを挙げ、そのような悲劇を無くすためにも「女性の教育支援が重要だ」と訴えます。

開発途上国における読み書き能力の育成など、特に若年女性の教育支援を行うルーム・トゥ・リード・ジャパンの松丸佳穂さん。

一方、木全さんは「日本女性の教育水準は世界3位と言われるほど高水準であるにも関わらず、その能力の大部分が活かされていない」と指摘。15年を超える活動から「男社会を変えるのは難しいが、男性が見習う女性リーダーを育成すれば社会が変わる」と経験に裏打ちされた持論を展開しました。

「健全な社会の実現」を掲げ、アジア女子大学との連携など内外で勢力的に女性の教育支援に関する活動をこなす木全ミツさん。

女性に光を当てるミモザの日。内外に少し目を向けるだけでもさまざまな問題が浮かび上がります。FIATは日頃からそうした問題に立ち向かうNPO団体の活動を支援していて、その一部はShare with Fiatのコーナーでも紹介しているので興味ある方はぜひチェックを。

午後5時、トークショーが終わる頃、山岡セイコウさんは急ピッチで作品づくりに専念していました。しばらくして平塚らいてうさんの肌に色が付くと、彼女の表情は昔の写真より明るく見えました。

取材・文 曽宮岳大