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人にも環境にも自分にも優しくいきる。それがフィアットカルチャーです。

日光彫と奥日光(前編)ワンデイ・トリップ with FIAT × MIJP

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文=友永文博 写真=太田隆生

東西の文化が交錯する、歴史あるパワースポットへ

 新緑が芽吹く直前の日光。今回の「FIAT × MIJ(メイド・イン・ジャパン)プロジェクト」のパートナーとなる日光彫の工房『村上豊八商店』は、東武日光駅からほど近く、東照宮へ続く商店街沿い。道路からセットバックされた建物が直営店舗、奥に工房があります。日光彫は、東照宮の造替にあたり全国から集められた彫物大工たちが余暇に手がけた作品がその起源。ヒッカキ刀という独特の道具1本を使い分け、多彩な線を生み出すのが特徴です。店主の村上隆大さん曰く、「手首を効かせて描くので曲線が滑らか。刃の寝かせ具合で線の太さ・強弱をコントロールします。風にそよぐ生き生きとした植物の葉脈などは、ヒッカキ刀でしか表せません」

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屋号を継いで3代目となる村上隆大さん。日光彫に変革を起こすべく取り組んでいる。

「FIAT × MIJプロジェクト」への挑戦

 日光彫独特の技に惚れ込んだフィアットが、オリジナルな意匠の丸盆の製作を村上さんに依頼することに。選ばれた図案はFIAT 500の屋根に乗る“三猿”。新旧・東西の文化の融合をユーモラスに表現しています。そして実際の下絵作成と彫りは長女の真亜子さんが担当。美術大学を卒業後、この道に入って4年。母親の眞澄さんから彫りの手ほどきを受け、伝統工芸士を目指す若き後継者です。「学んだグラフィックデザインを生かし、自分なりの特徴を作っていきたい。同世代のクリエーターの方々とコラボするなど、日光彫の枠も広げられたらって思います」。そんな娘を村上さんは傍で頼もしく見守っているようでした。

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上:資料をもとに真亜子さんが下絵をデザイン。東照宮の三猿とFIAT 500を組み合わせた斬新な構図が目を引く。下:工房の壁面いっぱいに並ぶ木地は、村上家の三男、司祐さんが手がけたもの。材料や施設の面で全国的に木工の木地作りが難しくなっているため、最近は他の工房に木地を供給することも多いという。

日光彫が直面する課題

 「日光彫も最大の問題は後継者不足。組合の中で60代の私が最年少という現状です。日用品や引き出物として昭和50年代に飛ぶように売れた座卓や花台も、生活様式が変化して需要が減少。さらに町内の工房では、木地作りの騒音や塗りの際の匂いに苦情が出ることも。そんな厳しい環境なので、後を継ごうという人が出てこなかった。幸い私は山間に設けた工場で木地作りから塗りまで一貫生産していますが、それでも課題は多いです」
 硬直した現状を打破すべく、村上さんは幾つか挑戦を始めています。その一つが塗りの色。どこかイタリアンカラーを思わせる鮮やかな赤や深い緑を独自に開発。さらに柄に彫りを施した男性客向けの小刀など新アイテムも試作中です。
 「うちは木地はすべて自然乾燥、最近では塗りに漆も使います。手間はかかるが、風合いや耐久性、手のなじみ具合など、愛着が湧くのは絶対に自然由来のもの。私たちの強みを生かし、お客さまの好みを引き出し、より満足していただける “提案”を積極的にしていきたいと思います」

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真亜子さんの美術大学への進学は、親に勧められたわけでもなく、全くの興味から。「後を継ぐ気もなかったのに、今では大学で木工や漆芸を専攻しておけばよかったと思うこともあります」と笑った。

若き後継者の決意

 真亜子さんが語ってくれた、こんな言葉が心に残ります。「今はネットで検索して画像をトレースしたりと、手軽にアイデアを得られる時代。でも、だからこそこれからは本物をしっかり見ていきたい。そんな思いもあって、庭に牡丹を植えました」
 工房を後にする際、庭先に目をやると小さな牡丹の木が数本。風に揺れるそれらが大輪の花を咲かせるのは、まだ先かもしれません。しかし凛々しくしっかりと、すでに土地に根付いているようでした。

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右:直営店舗には色も種類も多彩なアイテムが並ぶ。このように鮮やかな色合いこそ村上さんの真骨頂。二段引出¥10,000〜 左:場所は東武日光駅から徒歩1分ほどと大変便利。日光彫の体験(1人¥1,200税込/約90分)も随時受け付け中。旅のよき思い出にもなるので、ぜひ。

SHOP DATA

店名 村上豊八商店
住所 栃木県日光市松原町256
電話番号 0288-53-3811
営業時間 9:00〜17:00
定休日 不定休
Webサイト https://www.toyohachi.net/

さんしょの知られざる実力

 日光は湯葉が名物で、各所に湯葉を看板とする店があります。しかしここでお勧めしたいのは『柏崎商店』。さんしょをメインに、山菜・木の芽などを材料とする佃煮の知る人ぞ知る名店です。場所は『村上豊八商店』から700mほど東照宮寄り。奥日光への道すがら立ち寄ると、柏崎忠夫さんが笑顔で出迎えてくれました。代はすでに息子の智さんに譲ったものの、今もこうして店に立つことが多いとか。
 「さんしょは健康食。ただ残念なことに、その事実を知らない方が多い。さんしょの粉を少量舐めただけで舌が鋭敏に。そして甘いものは甘く、塩辛いものは塩辛く、それぞれ味わいがより豊かに感じられます。だから調味料を入れすぎる必要もない。さんしょは減塩効果のある、いわば万能調味料なのです」

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多彩なラインナップ。気軽に味見をした後、好みの品を選ぶことができる。

手作りにこだわった佃煮はどれも絶品

 店に並ぶ商品は、どれも独自の煮上げで一つ一つ手作業で作られたもの。柏崎さんに勧められ、最初にさんしょの粉を舐めた後、その中から〈きゃらぶき〉を試食してみました。すると確かに舌先が意識され、ほろ苦さが増幅。いっそう滋味深い味わいへと変化したのです。そのマジックにも魅了され、結局、〈実さんしょ〉と〈ふきのとう〉の2品を手にすることに。素朴で香り豊かな佃煮は、自宅用や日光土産に実にぴったりです(後編に続く)。

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右上:さんしょの効果を力説いただいた柏崎忠夫さん。右下:さんしょ各種のほか、〈しその実〉から〈ゆばしめじ〉まで多彩に揃う佃煮。さらに〈さんしょ煎餅〉(12枚入り¥500)も! 左上:堂々と風情ある店構え。左下:瓶詰めの〈実さんしょ〉(50g¥800)と〈ふきのとう〉(80g¥700)

SHOP DATA

店名 木の芽さんしょ 柏崎商店
住所 栃木県日光市下鉢石町797-1
電話番号 0288-54-0086
営業時間 9:00~17:00
定休日 無休
Webサイト http://www.nikko-sansho.com/

MIJPとは?

イタリアでは「アルチザン」、日本では「職人」と呼ばれ、
それぞれの優れた伝統文化とその技術を受け継ぐとともに、
日常の中で実際に使われ、愛される「ものづくり」に魂を込めている人々がいます。

イタリアの「ものづくり」文化を代表するFIATでは、
日本の文化ともっと交流し、もっとCuore(クオーレ:心)を通わせ合いたいとの想いから、
ひとつの特別なプロジェクトを立ち上げました。

それは、日本の「ものづくり」文化継承を目的にするNPO法人
「メイド・イン・ジャパン・プロジェクト」とのコラボレーションによって、
日本の優れた伝統工芸品に、新たな光をあてる活動です。

文化が出会い、心がつながり、笑顔を育んでいくこの取り組みに、
これからも、ぜひご注目ください。

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