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イタリア式シアワセは赤珊瑚が運ぶ!

今回は、イタリアで人気の「赤珊瑚(corallo rosso)」に注目します。日本でも珊瑚といえば、きれいな自然の産品というイメージですが、イタリアでは赤珊瑚が伝統的に愛され、ラッキーアイテムとして親しまれているのだとか。

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日頃から幸運を呼ぶラッキーアイテム好きなイタリア人。彼らが最も愛するマテリアルのひとつに、赤珊瑚(Corallo rossoコラッロ・ロッソ)がある。「赤い色をした金」とも呼ばれる赤珊瑚。その9割は、地中海沿岸で収穫されている。水深200メートルまでの海で生育する。とくにイタリアの南部ナポリ湾とサルデーニャ島アルゲロで採れたものは有名だ。近年は収穫量が制限されていることから、希少性はさらに高まっている。

Coralloの語源には諸説あるが、いずれもギリシア語で、固い骨を表すkoraillon、もしくは人のかたちを表すKura-Halosであるというものがある。自然の産品であるにもかかわらず、躍動する人体の姿に似たフォルムを形成することから命名されたものと考えられている。古代ローマでも男性の視線を釘付けにする女性用装身具として人気だったらしい。16世紀には、カップルの部屋でムードを高めるためのグッズとして、赤珊瑚の粉で周囲を飾ったロウソクが存在したという。

深い歴史を引き継いで、赤珊瑚は今日もイタリア女性に人気だ。ジュエリーショップを覗けば、赤珊瑚をあしらったブレスレットやネックレスなどが必ずといっていいほど飾られている。結婚式の記念品としても定着した人気がある。今年春にはイタリア郵便から、アルゲロの赤珊瑚を題材にした洒落た記念切手もリリースされた。伝統的ラッキーアイテムでありながら、時空を超えて人々の支持を集めている証拠だ。

赤珊瑚は、聖なるものでもある。15-16世紀のイタリア宗教絵画には、幼子キリストの首に赤珊瑚をかけた聖母子像がいくつも残されている。またカトリック教会で祈りに用いる数珠状の道具・ロザリオにも、赤珊瑚を用いたものがある。

同時に古くから、一般の「魔除け」としても珍重されてきた。イタリアには角(つの)の形をしたお守りがあって、人々は財布にしのばせたり、キーホルダーとして愛用している。イタリア旅行をした方なら土産物店で売られているのをご覧になった方もいると思う。多くは樹脂製だが、最上品は赤珊瑚を使ったものだ。スタイル、マテリアルとも最強のラッキーアイテムといえる。

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仕立ての本場ナポリの「ウルトゥラーレ」製ネクタイは、裏側に赤珊瑚で作った角をさりげなくかがられている。これはファッショニスタの間で、ひそかに有名だ。ファッションとしての赤珊瑚は、女性だけではないのである。ウルトゥラーレのクラフツマンは「赤珊瑚は大いなる自然の創造物、すなわち生命です。そして赤は情熱の血を表すものなのです」と筆者に熱く説明してくれたことがある。

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イタリアに住む筆者のまわりにも、赤珊瑚を身につけている人がいないか見回してみたら、知人のエリザベッタがいた。少し前から彼女の指には、かなり大胆かつ個性的なデザインの赤珊瑚付き指輪が輝いている。聞いてみると、ちょっとしたストーリーを披露してくれた。

彼女は4年前、それを街の新進ジュエリーデザイナーが営む小さなジュエリーショップで見つけたという。「ひとめ惚れだったのよ」。イタリア語で、ひとめ惚れはコルポ・ディ・フルミネ=落雷。まさに雷のようなインパクトだったという。彼女は眼科医の夫ファブリツィオと夕方の散歩のたび店のウィンドー前で足を止めた。でも、「私の夢の小箱にしまっておいたの」と振り返る。

それから数ヶ月、エリザベッタに誕生日がやってきた。ファブリツィオから渡されたのは、なにやら巨大な箱だった。箱を開けると、中にもうひとつの箱が。そしてさらに小さな箱が。マトリューシュカ状態である。そして、最後の小さなケースを開けてみると、そこにはエリザベッタが夢見ていた、あの赤珊瑚の指輪が入っていたという。ユーモアに富んだ演出だった。「ファブリツィオは、わかっていたのよ!」

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その彼も赤珊瑚について語る。「ボクの母も赤珊瑚のブローチが好きだったんだ。イタリアで赤珊瑚は、代々大切に引き継いでゆくもの。きっと、こいつもマンマの指輪を引き継いでゆくと思うよ」。そう言って、ひとり息子の肩を引き寄せた。

後日談として、エリザベッタ&ファブリツィオ夫妻は、念願の自邸を手に入れた。その広さ1ヘクタール。庭には、数百本のオリーブの樹とブドウ畑までついてきてしまった。夫妻がまったく植物を育てた経験がないにもかかわらず、である。赤珊瑚パワーが少々ブーストしすぎたのかもしれない。

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※写真は欧州仕様車です

話はかわってこのたび、赤い珊瑚色の「FIAT 500(チンクエチェント) CORALLO」が日本で発売された。本場イタリアでは、ファッションピープルたちから一目置かれていたボディカラーだ。今回発売されるのは限定で僅か100台。乗る人がハッピーなマインドになるだけでなく、見かけた人まで「ラッキー!」と声をあげてしまうに違いない。イタリアの幸運が、日本の街角に降り注ぐ。

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取材・文 大矢アキオ Akio Lorenzo OYA