ゆっくり生きよう・にっこり走ろう

人にも環境にも自分にも優しくいきる。それがフィアットカルチャーです。

イタリアのチョコレートの街、トリノ


こんにちは。バイヤーみりと申します。17年間、神戸の通信販売会社フェリシモでチョコレートバイヤーをしています。数えてみたらこれまで、世界20国以上から1683種類のチョコレートを日本に紹介してきました。
私のチョコレート選びのポイントは、決して有名ではなく、華々しい賞暦があるわけでもないけれど、地元の人に愛されていて、作り手の仕事への情熱、パッションを感じること。そんなチョコレートを探して、毎年、世界を旅しています。

そんな私がもっとも好きな街。それはトリノです。

トリノを車で走っていると、フィアットの工場がありました。石畳の町の広場にもたくさんのフィアットが走っています。そう、トリノといえば、フィアットですよね。


「capital of chocolate」のトリノを紹介!

今日はフィアットの生まれ故郷トリノを“チョコレート”でご紹介します。
トリノは日本人観光客もまだまだ少ないですが、ぜひ一度訪れて欲しいすばらしい街です。


初めてトリノに行った時、ショコラティエに会うと「ご存知のようにトリノはチョコレート発祥の地ですから」といろんな人がいうのです。
“capital of chocolate”という言葉が誇らしげに、会話の中に、そして街の至るところに、何度も出てきます。

チョコの発祥はアステカ文明。南米なのだけれど、そこから持ってきたのはスペイン人でした。
いったいどうして?と聞くと、「もともとこの一帯を支配していた王家サヴォイア家がチョコレートをトリノの職人にいち早く作らせ、それをスイスの職人が学びに訪れた。それでここトリノから世界にチョコレートが広まった」という由来なのだそうです。

歴史を引き継ぐチョコレートたち!

イタリアのチョコはほかの国のチョコとは違います。とてもユニーク。
チョコの世界にもトレンドがあり、流行にそった新商品開発があるのですが、イタリアのチョコに“いまどき”なニューフェイスはあまり見られません。しっかりと歴史をひきついだ、愛着のあるチョコレートです。
イタリアでは、チョコは伝統的にはカフェで売られています。他のヨーロッパの国のようなショコラトリー(チョコレート専門店)はあまり見られません。


イタリアの人は一日に何度もカフェに行って、一粒、二粒、濃いエスプレッソとともにチョコを楽しみます。

そのため、ほとんどすべてのイタリアのチョコは包み紙に包まれています。裸のものはほとんどありません。それも、カラフルで美しい包み紙ばかり。カップの淵に置いたりつまんだりしやすい、とても親しみやすいチョコです。
そして、何よりの特徴はその味です。イタリアのチョコの特徴でもありますが、ヘーゼルナッツを30%くらい混ぜるのです。ですので、香ばしく非常によくエスプレッソに合います。
戦時中カカオ豆が手に入らず、ピエモンテ産のヘーゼルナッツを代用に使ったのが始まりで、それが今でも続いています。でも、ヘーゼルナッツを30%も混ぜると、なかなか固まらないので、ベルギーチョコのような複雑な形が出来ません。搾り出しか四角にカットしたものが多いのはそのためです。
さらに味もヘーゼルナッツの主張が強いので、フランスチョコのようにいろんな変化を与えることは出来ません。よって、その味は大人も子どもも好きな、安心の味わい。飽きの来ないシンプルなチョコ。とってもフレンドリー。それが、イタリアのチョコなのです。
その良さを今でも、時間が止まったような歴史あるカフェなどで味わえるのが、このトリノの街の魅力なのです。

代表的なのがカフェ ビチェリンです。なんと創業250年。小さな小さなお店は、今も教会の前の広場で地元の人に愛されています。


ビチェリンとはこのドリンクのことで、こう見えてもホットです。
グラスの底にはビターチョコがたっぷり、その上にコーヒーを注ぎ、さらに上にクリームがのっています。この味がたまらない! ビターで上品な大人のドリンクです。

そのビチェリンで、同店の創業250年のアニバーサリーチョコを発見しました!

中身は「クレミノ」という、もちろんヘーゼルナッツたっぷりのイタリアチョコです。
こんな素敵なチョコと出会って日本のみなさんに紹介できるのが、この仕事の醍醐味です。

もうひとつ、トリノで感動したことがあります。ラペッラという、
ブランドのチョコレートをご紹介します。「トリノの真珠」というチョコを作っています。

一から作られるチョコレート!

なんと、トリノのショコラティエのほとんどはチョコレート作りをカカオの焙煎から行います。ほかの国では、ショコラティエはクーベルチュールというチョコの固まりを買ってきて、それにミルクやお酒を混ぜたりして、美しく仕上げるのが仕事です。一から作るのは世界的にもたいへん珍しいことなのに、彼らには当たり前のようで、決してそれをアピールしたりしません。ラペッラでも石臼のような機械でカカオを砕いていました。ほんもののハンドメイドでした。
なんと、使っている秤は100年前のものだそうです。どれも大事に手入れされて使われているのがよくわかりました。職人技、クラフツマンシップにも通じるところがあります。

そう、イタリアでチョコレートの買い付けの商談をしていると、他の国とは大きな違いに気づきます。ファミリー経営が多いのも特徴ですが、加えて、イタリアでは必ず工場に案内されるのです。このラペッラも例外ではありませんでした。工場といっても、学校の教室のようなシンプルなところ。そこで必ずマシン(振動機や冷却機やミキサーなど)の説明からしてくれるのです。そして、とても誇らしげに、まるで自分の家族を紹介するように、ひとつひとつのマシンの歴史を話してくれるのです。
「僕たちのアトリエは生きた博物館だよ」、そう笑顔で教えてくれました。

(写真:左からチョコの研究に熱心なラペッラのオーナー、その娘さん、50年もチョコをつくり続ける職人のロッシーニさん)
トリノはスローフードでも有名です。食べ物を一から丁寧に原料から育て、食べる。そんな姿勢がチョコにも普通に行われているのです。それが彼らの美学なのです。その徹底ぶりに参ったという感じがしました。

チョコレートや食べ物だけでなく、時代に流されずものづくりをする気質、美学がフィアットの故郷、トリノの街にはあふれています。今年のバレンタインはそんな魅力とともに、トリノのチョコレートを味わっていただけたら、と思います。

(文・写真 バイヤーみり