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「石かわ珈琲」 本物の珈琲のおいしさを知っていますか?

石かわ珈琲

『コーヒーを飲む。』

そう聞いたときどんなシーンを思い浮かべるかで、コーヒーへのイメージは大きく変わります。たとえば、自販機で買った缶コーヒー。手早く淹れたインスタントコーヒー。どれもコーヒーであることに違いはありません。けれども、缶コーヒーとインスタント、そして今回ご紹介するスペシャルティコーヒーとを実際に飲み比べてみたならば・・・「どれも同じコーヒーだ」なんて思えないことでしょう。

『丁寧に淹れたスペシャルティコーヒーをゆっくりと飲む。』

こうなると、コーヒーはただの飲み物ではなくなります。たかだか一杯のコーヒー。でもそのふくいくたる香りを嗅ぎ、旨味をじっくり味わうことで、疲れ果てた頭脳はひとときの休息を得ます。これを飲んだらまたがんばろう!という気力がわいてきます。一杯のおいしいコーヒーが与えてくれるパワー。それはとてつもなく大きいのです。

丁寧に淹れたスペシャルティコーヒーをゆっくりと飲む。

「石かわ珈琲」でホンモノのコーヒーを!

そんなホンモノのコーヒーを求めて、北鎌倉の「石かわ珈琲」を訪ねました。
最寄り駅はJR横須賀線の北鎌倉。あじさい寺のひとつとして有名な明月院をさらに過ぎ、細い1本道をひたすら歩いていくと、立て看板が見えてきます。駅からは、ゆっくり歩いて15分ほど。途中には小川が流れ、落ち着いた風情の住宅や小さなお店がぽつりぽつりと建っています。自然豊かな山道なので、散策を楽しみながら進みましょう。
そうそう、お店までの道のりは道幅が狭く、近くには駐車場もないので、車でいらした方は駅周辺のコインパーキングなどに愛車を駐めてください。

スペシャルティコーヒーのビーンズショップ&小さなカフェ石かわ珈琲は築40数年の民家をリノベーションした、スペシャルティコーヒーのビーンズショップ&小さなカフェ。
携帯電話も「圏外」になる、本当の意味で隠れ家的なお店です。

北鎌倉という土地柄だけでも「静かな場所」なのに、石かわ珈琲の申し分ない立地や内装、雰囲気ときたら!ゆっくりとコーヒーを味わうのに必要なすべての要素が揃っています。「こんなに人通りの少ない場所で本当にやっていけるのか?とよく言われましたよ。」と店主の石川新一さんは笑います。「多くのお店の中からうちを選んでもらうのは確かに難しいです。でも、ロケーションのことは最初から心配していませんでした。私がかつて、美味いコーヒーを初めて飲んで感動したのと同じように、スペシャルティコーヒーの魅力を知っていただくためには、場所よりも重要な要素はたくさんありますから。」

かつて石川さんを感動させたコーヒー。それは、スペシャルティコーヒーの先駆者として知られる堀口俊英さんが展開する「珈琲工房HORIGUCHI(ホリグチコーヒー)」で飲んだ一杯でした。

「昔からコーヒーは好きでした。でも当時はまだスペシャルティが今ほど知られてなくて、私自身も濃くて苦いコーヒーがうまいと思いこんでいました。初めてホリグチのコーヒーを飲んだとき、「今まで飲んでいたものとは全く違う!なんだこれは!?」と少なからぬ衝撃を受けたんです。苦手な人の多い酸味さえも、これこそが本当のコーヒーの酸味なんだと気づきました。」

そして、石川さんは14年ほど勤めた会社を辞めます。「当時、35歳ぐらいだったかな。その何年か前から、このまま定年まで今の仕事を続けるのか?と模索しはじめていて。どうせ転身するのなら、自分の好きなことをやろうと思っていました。その矢先に、ホリグチのコーヒーを知ったんです。」そのときの石川さんの職業はSEだったとか。まさに全く無縁の世界へと足を踏み入れることになるきっかけが、たまたま口にした一杯のコーヒーだったのです。

最初は1年程度で独立するつもりで、ホリグチで働き始めた石川さん。実際にやってみると1年では足りなくて、結局3年半ほど修業したといいます。「私はホリグチで接客術から抽出、焙煎の技術など色々なことを学びましたが、何よりも重要で時間をかけたのは、味覚を鍛えることです。コーヒーは、生豆の産地や農園、品種、生産処理、収穫年などによって味が全く変わります。実際に淹れてみて、この豆にはもう少し深い焙煎のほうがいいなとか、そういう判断ができるのは、味覚でしかないのです。」

生豆が7割、焙煎技術が2割、抽出が1割おいしいコーヒーを淹れるために、最も重要なのは質のいい生豆を使うこと。次に重要なのが、生豆が活きるような焙煎やブレンドをすること。そして最後の仕上げが、ドリップの仕方です。石川さんの師匠である堀口さんも「生豆が7割、焙煎技術が2割、抽出が1割」と断言するくらい、生豆の質が重要なのは間違いありません。

「コーヒーって、豆と水だけでしょ?やっぱり、豆の質が圧倒的に重要なんですよね。よくない生豆を使ってしまったら、どんなにじっくり丁寧にドリップしても、残念ながらおいしいコーヒーにはなりません。」と石川さんは言います。つまり、味わう側である私たちがたどるべき第一歩は「最高の生豆を使って、最高の焙煎をしてくれるお店」に出会うことなのです。

丁寧にドリップ

おいしさの秘訣は「豆で買う」!

石かわ珈琲は、石川さんの淹れる最高のコーヒーを飲みにくる常連客が大半を占めますが、インターネット通販で焙煎豆を買う人も少なくありません。「お店で試飲して、気に入った豆を定期的に購入されるお客様もいらっしゃいますよ。」と石川さんが言うように、この店でコーヒーのおいしさに目覚め、自宅でもその味を再現したいと考える人は多いことでしょう。ちなみに私自身もそのひとり。メール便なら送料も200円しかかからないので、気軽に注文できるのです。

自宅でおいしいコーヒーを味わうコツを石川さんに尋ねると「とにかく淹れる直前に豆を挽くこと」を筆頭にあげてくれました。粉の状態で買わず、豆のまま買うのです。「グラインダーはどんなものを使ったらいいか?とか、細かいことを気にするよりも、とにかく豆で買うことです。」と石川さん。グラインダーで豆をゴリゴリと挽いていると、コーヒーを淹れるとき、飲むときとはまた別の、特別な香りがただよってきます。あの香りを味わうためにも、「豆で買う」のはおすすめです。

おいしい豆を入手し、飲む直前に挽いたら、あとはじっくり丁寧に抽出おいしい豆を入手し、飲む直前に挽いたら、あとはじっくり丁寧に抽出するだけ。「ドリップの道具や方法はいろいろあります。どの方法で淹れるかはその人の好みだと思いますが、おいしく淹れるための基本みたいなものはやはりあります。それだけ守れば何も難しくはありません。」

石川さんがコーヒーを淹れる所作はムダがなく、茶道のお点前を見ているような気がしました。
お店にうかがって、その極意を習ってみるのもよいかもしれません。

最後にもうひとつ、とっておきのおいしい情報を。

石かわ珈琲のコーヒーをお店で味わうときは、ぜひケーキも一緒に注文してみてください。
おすすめは、冒頭の写真にも載っている「チーズケーキとパウンドケーキのハーフ&ハーフ」。じつはこのケーキも、「どうせコーヒー屋をやるなら全部自分でやりたいと思って・・・」という石川さんが、ご自身で作っています。まだサラリーマンだった時代に製菓の専門学校に通った成果なのだとか。コーヒーによく合う味にしているというだけあって、この上なく完璧な組み合わせが楽しめます。

石かわ珈琲
神奈川県
鎌倉市山ノ内明月谷197-52

取材・文 山根かおり

企画も手がける編集ライター。利き酒師。クッキングインストラクター。おいしいもの、こだわりの人、すてきな場所、丁寧な手仕事を目にすると、「もっと多くの人に伝えたい」と思わずにはいられない。旅と食が好き。旅先で地元の人が利用する市場やスーパーで調味料や食材を買い込み、帰国してからその味を再現するのが目下の楽しみ。Culture Magazineでは、カメラマンの夫と共にFIAT的な世界観のモノやコトを探して伝えている。

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