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デニムの聖地・井原で、ジーンズの魅力を再発見!

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両端が、今回の井原取材をコーディネートいただいた『アルファ企画』の広中登志治さん(右)と『モードプラニング タニモト』の谷本可寛さん(左)。井原デニムのさらなる発展を牽引するキーパーソン。

文=友永文博 写真=加瀬健太郎

FIATから限定色の「500X Jeans」が登場!

 世の中にジーンズほど、バリエーションが豊富で大勢に愛され、しかも新鮮であり続けているファッションアイテムはありません。実はFIATから、そんなジーンズをイメージさせる限定車「500X Jeans」が10月に登場します。もちろん、エクステリアはウォシュアウトしたような、こなれ感がある専用色の「ジーンズ ブルー」。この発売を記念して、オリジナルのデニムポーチを作ることになりました。その製作を手がけるのが、デニムの街として脚光を浴びる岡山県南西部の井原いばら市周辺です。

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右:10月6日に発売される「500X Jeans」。全国で限定わずか90台。
左:FIATのロゴパターン柄が入った、井原産のセルビッチデニム製ポーチ。

デニム発祥の地、井原とは?

 井原は江戸時代から続く藍染織物の産地。明治・大正時代には「裏白」と呼ばれる表が藍色、裏が生成りの厚手織物を生産していました。実はこれこそ日本発のデニムの起源。そして戦後、アメリカ文化と同時にジーンズが人気になると、井原は年間1,500万本、国内生産量の75%ものジーンズを産するように。ところが平成の初めに安価な海外製品の攻勢で、地元のデニム関連メーカーは大打撃を受けます。しかし“デニムの聖地”の誇りを胸に、地道にいっそうのクオリティを追求。結果、世界中のバイヤーの目に留まり絶賛され、見事に復活を果たしたという歴史があるのです。

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上右:井原市は岡山県の南西部。広島県・福山市に隣接。
上左:『クロキ』本社の周囲は田園地帯。この地域では桃やブドウの生産が盛んだそう。
下:倉庫に山積みになっているのは、織機にかける糸を巻いていた空のビーム。

「井原デニム」の生産拠点、生地メーカー『クロキ』を訪ねる

 今回は、ジーンズの魅力を改めて探るため、この井原で生産現場を巡ってみました。現地案内役は、オリジナルポーチの制作コーディネイトを依頼した『アルファ企画』社長の広中登志治さんと『モードプラニング タニモト』代表の谷本可寛さんの2人です。
 最初に訪れたのは井原でも有数のデニム生地メーカー『クロキ』。黒木立志社長曰く「井原は日本のデニム発祥の地。現在、製品メーカーの集まる岡山・児島がジーンズの町として有名ですが、デニムの聖地といえばここ。児島のほか、海外の有名ブランドにも生地を提供しています」。今では『クロキ』の取引の6.5割を占めるのが海外。特にイタリアとの関係は深いと言います。「当初は言葉の背後にある相手の意図を汲み取るのに苦労しましたが、一旦、信頼関係を築けた後はかなりスムーズになりました。イタリア人は私たちの品質を高く評価してくれていますから」と原田政宏常務。原田常務に案内され、本社に隣接する織布工場に足を踏み入れると、セルビッチデニムを産するシャトル織機が何台も大きな音を立ててフル稼働しています。また別の織機ではフランスの有名ブランドのネームタグが。国際的に高い評価を得る『クロキ』の実力を存分にうかがい知ることができました。

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『クロキ』本社に隣接する織布工場。

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右上:以前は手仕事による綛(かせ)染めと天日干しが行われていたが、1965年頃にロープ染色機が開発されるとデニムの生産量が飛躍的に増加したそう。
右下・左上:セルビッチデニムを織り上げるアナログの旧式シャトル織機。
左下:最新の織機は、シャトル織機に比べて生地幅が2倍ほど広く、スピードも圧倒的に速い。

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上:『クロキ』の黒木立志社長(右)と原田政宏常務。
下:こちらがセルビッチデニム。生地の両端に「耳」(セルビッチ)と呼ばれるほつれ止めが施されるのが外見の特徴。手間はかかるが色落ち感やシワの出方に味があり、高級ジーンズの生地として人気。

世界で唯一、最新鋭のロープ染色センター

 続いて本社からクルマで5分ほどの場所にある『クロキ』の染色センターへ。2階建ての工場内では織布の前段階の工程(染色・分繊・糊付け)を担当。糸を束ねて長いロープ状にして染めるロープ染色を行なっています。自動化された革新的な大型機械が並ぶ工場内では、比較的少人数のスタッフが機械の稼働状況を随時チェック。徹底した品質管理がなされていました。
 デニムの未来について、「デニムは色落ちなど経年変化こそ魅力。その分、扱いが難しい部分もありますが、今後は機能性や強度を高めてスポーツ衣料、介護衣料といった新たな分野への展開も考えています」と語ってくれた原田常務。近い将来、まだ誰も見たことのないデニム生地がここから誕生するかもしれません。

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右上:染色前の準備として、糸を束ねてロープ状に。
右下:ロープ状になった糸をインディゴ液に何度も浸けて染色。回数を経るごとに、生成りの糸が黄色、緑色、紺色と徐々に変色していく。
左上:原田常務が「安定した品質のための重要ポイント」と言う分繊の工程。染色したロープ状の糸を分け、シート状にして均一なテンションになるように円柱のビームに巻いていく。ここをしっかりやれば、織りの段階での不良品を格段に減らせるそう。
左下:最後は織る際に出る毛玉を減らし、張りを持たせて織りやすくするための糊付け(サイジング)の工程。その後、乾燥させた糸を別のビームに巻き取って織機にかける。

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ロープ染色で染めた糸は中心が白いまま残る。このため穿き込むほどに表面の色が落ち、白が出てきて独特の風合い(アタリ)となる。

「井原デニム」を支える実力派の縫製工場へ

 そして午後には、隣町の福山にある縫製工場『小林被服』にうかがうことに。こちらは主にジーンズなどカジュアル衣料を手がけています。「デニムのように時間とともに変化し、味が出やすい生地の縫製が好きですね」という社長の小林弘幸さん。注文内容や生地の厚さに応じて型紙(パターン)のディテールを修正。糸のテンションや針、ステッチの種類や幅を変えるなど、細やかなディレクションを自ら行ないます。さらに「デニムは呼吸しているように感じます。だから場合によっては温度や湿度に合わせ、ミシンを微調整することもあります」とも。このような高い技術が多くのクライアントからの絶大な信頼を獲得。「井原デニム」の国際的な名声アップの一翼を担ってきたのです。

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右上:できるだけ無駄の出ないように、一枚の生地から多くの型紙を取るのも腕の見せどころ。
右下:ステッチの幅もオーダーによって変更。通常は0.6㎜だが、昔ながらのユニオン仕様だと0.72㎜。
左上・左下:それぞれ分担して作られた各パーツを縫い合わせ、最終的に1本のジーンズに仕上げる。

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上:「縫製時にできる引きつりなどの歪み(パッカリング)をも味として、意図的に取り入れ、仕上げることも多いですね」と小林弘幸社長。技術の確かさには自信あり。
下右:工場の改修を担当したペンキ職人が実際に着用していたジーンズ。クライアントに説明するため、仕上がりのサンプルとして譲り受けたとか。リアルなペイント加工が施された1本。
下左:『小林被服』の周辺は、自然が豊かでのどかな環境。工場内も和やかな雰囲気。

多彩な仕上げ加工こそ、日本のジーンズの大きな魅力のひとつ

 日本のジーンズで生地のクオリティとともに世界ナンバーワンといわれているのが、ウォッシュやダメージといった加工技術。今回の現場訪問の最後の場所は、そんなデニムの加工を一手に引き受ける『タグチ』です。工場内には各種ウォッシュ、ブリーチ用のマシーンや乾燥機とともに、絶えず新しいテクニックを開発するための実験室が。最近ではレーザー光で染料を瞬時に昇華させる方法にヒントを得て、超音波や電子レンジのマイクロ波での加工にもチャレンジ。ただ残念ながらクオリティコントロールが難しく、成功には至らなかったとか。
 「クライアントによって仕上がりのイメージが異なるので、より納得していただくために、体にダメージのない材料を使ったり、サンプルを多めに準備したり、いろいろと工夫をしています。それは日本人だからこそできる取り組みかもしれません。そして最後のミリ単位の調整が、結果的に大きな違いを生むのだと思っています」と田口隆章社長。このモノづくりにかける熱い情熱と真摯な対応が「日本のジーンズこそ世界一」と言わしめる源なのだと確信しました。

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右上:各種ウォッシングマシーンが並ぶ工場。洗剤の種類や量、洗う水の温度や時間など、さまざまな組み合わせで加工の仕上がりが異なってくる。
右下:左右の円柱状のマシーンがストーンウォッシュ加工用。
左上:ストーンウォッシュ加工では、人工石を使うバレル研磨より軽石を用いた方がよく色落ちするそう。右手の軽石が数回の使用を経て左手ほどの大きさに。
左下:ここでは生地の洗いも手がける。例えばストレッチ素材などは製品後の伸縮率を安定させるため、縫製前に原反の状態で洗いにかけるそう。

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業種を少しずつ変えながらも、田口隆章社長で3代目となる『タグチ』。

デニムと重なる500Xの魅力

 井原周辺の生産現場を訪ね、改めてジーンズの奥深い魅力に触れた今回の旅。それは例えば、世界中で受け入れられるユニバーサルなデザイン、デニムという素材が持つ豊かな風合いと無限のポテンシャリティ、あるいはプロフェッショナルたちのモノづくりへの並々ならぬこだわり・センスといったもの。そしてこれらはまた、FIATが送り出すコンパクトSUV「500X」というクルマの魅力と見事にオーバーラップする気もします。
 今週末はお気に入りのジーンズを履いて、愛車の500Xを運転し、そろそろ紅葉の始まる高原にでも出かけてみてはどうですか。体とクルマの絶妙なフィット感が、ドライビングを一段と楽しくしてくれるはず。また最新の限定車「500X Jeans」を手に入れた方は、ぜひ自分テイストの味出しを施しながら、これから末長く育ててあげてください。

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右上:井原鉄道の井原駅庁舎1階に「井原デニム」の発信基地『D# 井原デニムストア』が入っている。2階には「井原デニム」の歴史などに触れられる小コーナーも。
右下:デニムクリエイターで『D# 井原デニムストア』の店長も務める小野華子さん。
左上:店頭に並ぶスタイリッシュなデニムジャケット 各¥49,000。
左下:「井原デニム」を表す「D#」のDはデニム、#は井原の井の形状から。

SHOP DATA

店名 『D# 井原デニムストア』
住所 岡山県井原市七日市町944-5 井原駅ビル構内
電話番号 070-5057-6070
営業時間 11:00〜18:00
定休日 水曜
Webサイト http://www.ibara-denim.com/

「井原デニム」を支えるプロフェッショナル企業

■アルファ企画 商品企画 広島県福山市神辺町道上2635 http://www.alphajp.co.jp/ 
■タニモト モードプラニング 岡山県井原市西江原町4451-2 http://thorny-path.jp/
■クロキ デニム製造販売 岡山県井原市西江原町5560 http://www.denim-kuroki.co.jp/
■小林被服 衣料縫製 広島県福山市神辺町上御領1735-4 http://cobayasi-clothing.co.jp/
■タグチ 洗い・加工 広島県福山市神辺町下御領1272-1 http://www.bingonet.jp/taguchi