ゆっくり生きよう・にっこり走ろう

人にも環境にも自分にも優しくいきる。それがフィアットカルチャーです。

硯と食以外でも“進化”を続ける、石巻のおすすめアドレス

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文=友永文博 写真=太田隆生

伝統工芸と食だけではない、石巻の魅力

 前回は宮城県・石巻の伝統工芸品、雄勝硯の工房を訪ねるにあたり、現地の美味を堪能できる食事処を紹介しました。この夏、石巻は「Reborn-Art Festival 2017」も開催され、訪問するには絶好のタイミングです。ここではその際にぜひ立ち寄っていただきたい、その他のおすすめスポットを幾つか紹介します。

 まずは町のシンボルともいえる『石ノ森萬画館』です。「サイボーグ009」や「仮面ライダー」の生みの親である石ノ森章太郎さんは、1995 年に縁あって当時の石巻市長と対談。そこで石巻を活性化させる「マンガランド構想」を得ます。その後、1998年に亡くなった石ノ森さんの遺志を継ぎ、対談から6年を経て、2001年に『石ノ森萬画館』がオープン。JR石巻駅から続く「マンガロード」にはおなじみのキャラクター像も並んでいます。

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形状がマンハッタンに似ているからと、『石ノ森萬画館』のある中瀬を石ノ森さんは「マンガッタン」と命名。宇宙船をイメージした建物は3階建て。手前に立つキャラクターが地元のヒーロー「シージェッター海斗」。

大人も楽しめるワンダーランドは、街の復興のシンボル

 館内には石ノ森作品の魅力を伝える多彩な展示物がいっぱい。懐かしい面々に再会を果たした気持ちになり、大人も一気にテンションが上がります。体験型アトラクションやトリッキーな仕掛け、豊富な資料など、つい見入ってしまうコーナーが多く、時間を忘れるほど。また特に惹かれたのが、エントランス前で勇ましいポーズをとる石巻のヒーロー「シージェッター海斗」。特別映画が限定上映中のほか、1階のショップでソフビの人形を販売。スカイブルーとイエローが基調のいでたちは、颯爽とカッコよく、石巻の守護神として十分な存在感です。

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右上:2階の常設展では、仮面ライダー1号から最新のエグゼイドまで歴代ライダーが勢揃い。
右下:3階には約6,000冊の図書ライブラリーや、館のオープンに寄せられた著名漫画家の方々の色紙の展示のほか、カフェも併設。
左上:1階正面のガラスをすり抜けている、仮面ライダーの原型となった「スカルマン」。震災時は津波で1階の展示物は全て流されたが、奇跡的に犠牲者はゼロ。休館中も全国から届く励ましのメッセージに後押しされ、震災発生から1年8カ月後に施設を再オープンした。
左下:常設展入ってすぐは、音と映像で織りなす「サイボーグ009」の世界。©石森プロ、©石森プロ・東映

SHOP DATA

店名 石ノ森萬画館
住所 宮城県石巻市中瀬2-7
電話番号 0225-96-5055
営業時間 9:00〜18:00(12〜2月は〜17:00)
定休日 第3火曜(12〜2月は火曜)
料金 大人¥800
Webサイト http://www.mangattan.jp/manga/

400年前の復元船を間近に見る絶景スポット

 さらにもう少し足を伸ばして訪ねたいのが、中心部からクルマで30分ほど、牡鹿半島の北西部に建つ『宮城県慶長使節船ミュージアム(サン・ファン館)』です。今から約400年前の1613 年10月28日、付近の月浦港から仙台藩主・伊達政宗の命を受け家臣・支倉常長が「サン・ファン・バウティスタ」号で太平洋へ出帆。目的は当時スペインの植民地だったメキシコとの通商を求め、スペイン国王とローマ教皇に謁見すること。ここはその慶長遣欧使節の歴史や帆船文化を紹介する博物館なのです。

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上:ステージから放射線状に彩られたタイルが美しい『サン・ファンバウティスタパーク』。復元船の進水日を記念して毎年5月下旬に開催される、地域の大切なイベント「サン・ファン祭り」ではメイン会場に。
下:展望棟の屋上は、太平洋を眺望できる牡鹿半島の絶景スポット。

 隣接する美しいイタリア式広場や著名な建築家・石井和紘が設計したガラス張りのモダンな建物にも目を奪われますが、館の目玉はやはり復元・係留されているサン・ファン号の展示。しかし建造から24年が経ち老朽化の影響によって、残念ながら現在、乗船見学と沿岸部のドック棟の立ち入りが禁止されています。しかしその勇姿は、エントランスから標高差30mのエスカレーターを下り、野外広場から眺めるだけでも、かなりの迫力。再びサン・ファン号を間近に体験できる日が訪れることを願わずにはいられません。

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上:20世紀最後で最大の木造洋式帆船「サン・ファン・バウティスタ」号。船名は「洗礼者聖ヨハネ」の意。復元に際しては、地元の船大工を中心に石巻の地で、史実に忠実に木造船にこだわって建造が進められ、1993年5月22日に進水日を迎えた。
下右:慶長使節展示室では、難航する交渉にあたった常長の苦悩をうかがい知る資料なども。
下左:ロビー奥には震災時の被災の様子を記録した展示コーナーもあり。津波が押し寄せた際、復元船をつなぐ28本のロープのうち4本がかろうじて残り、沖合いに流されずに済んだそう。

SHOP DATA

店名 宮城県慶長使節船ミュージアム(サン・ファン館)
住所 宮城県石巻市渡波字大森30番地2
電話番号 0225-24-2210
営業時間 9:30〜16:30(8月は〜17:30)
定休日 火曜(祝日の場合は開館)、年末年始
料金 ¥350(高校生以下、サン・ファンパークは無料)
Webサイト http://www.santjuan.or.jp/

本とコーヒーとお土産品で、旅のリフレッシュに最適

 最後に、小さいながら、石巻のかけがえのない思い出となってくれるはずの2つのスポットを紹介します。ひとつ目は旅の合間に立ち寄るには最適な『川の上・百俵館』。ここはプライベート図書館とカフェが融合した施設で、地元のコミュニティスペースでもあります。
 もともとは精米所だった天井の高い平屋を改装。光にあふれた気持ちのいい空間が出来上がりました。約3,000冊の蔵書は、有志が持ち寄ったリ、全国に募ったりしたもの。たくさんの絵本のほか、書籍は「将来・夢」「デザイン思考」「世界の景色」など15ほどの興味深いテーマごとに分類されており、自由に閲覧が可能(最大5冊まで、2週間の貸し出しもOK)。
 隣接するカフェスペースでは、飲料や軽食、ランチが楽しめるほか、地元特産のお茶や和菓子なども揃っていて、お土産も調達できます。館内には無料Wi-Fiも装備。各自が思い思いにくつろいだ時間を過ごせるので、旅の中継地としてもとても魅力的なのです。

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上:天井の梁には精米所だった名残の滑車が。奥の壁際には小さな子どもたちも利用しやすい、小上がりのスペースを設けている。
下右:市内中心から車で約10分。音楽会やファーマーズマーケットなど多彩な催しが定期的に開かれ、訪れる人々の大切な交流の場に。
下左・写真奥がカフェスペース。桃生茶や三輪田窯の器、島津麹店の「華麹」、青葉屋の「瓦煎餅」など、石巻土産にぴったりの品々も販売。

SHOP DATA

店名 川の上・百俵館
住所 宮城県石巻市小船越字山畑343-1
電話番号 0225-24-6625
営業時間 10:00~17:00
定休日 月曜
Webサイト http://kawanokami.com/hyappyokan/

大漁旗をリメイクした、石巻発のオリジナルブランド

 ふたつ目人は、人と少し差がつくお土産を手に入れたい方におすすめの「funade studio」です。ここは大漁旗をリメイクする、石巻発のブランドのアトリエ兼ショップ。京都でファッションデザイナーをしていた田中鉄太郎さんが立ち上げました。田中さんは震災のボランティアとして石巻に駆けつけ、復興が進むにつれ、次に自分ができることは何かを考えていた際、偶然に泥まみれの大漁旗を発見。「これらを甦らせよう」、そう直感し、持ち主の漁師の方々から譲り受け、大漁旗を使ったアイテムのプロデュースを始めたそうです。「大漁旗は船の進水式の際に、海上の安全と豊漁の願いを込めて知人、友人から贈られる祝いの旗。それを再生し届けることは、街と漁業の再生を願う祈りの形のひとつだと思っています。まだ一歩を踏み出せないでいる人たちへ、船出へのエールとなれば嬉しいですね」。

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右上:人気のブレスレット 各¥1,500
右下:キャンドルホルダー 各¥12,000
左上:レトロバッグ(小)各¥5,500(すべて税抜)。最初は4、5点から始まったアイテム数は今では約40までに拡大。
左下:店内の何気ないディスプレイもかわいい。

 街の女性たちに、仕事として製作を依頼。そのクオリティが認められ、今では都内の有名セレクトショップほかでも取り扱いが始まりました。ただ、当初は約300枚あった大漁旗は5年を経て100枚弱に。材料がなくなれば、ブランドも終了せざるを得ません。「もともと縁を頂き始めたこと。そのときは自分の役目もひと段落着いたということだと思います。funadeが終わっても、また仲間と、あるいはひとりでも、復興のためには何でもできるという覚悟はできています」。

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上:以前はマッサージ店だった物件を仲間と大胆にリノーベーションした店舗。奥がアトリエと大漁旗のストック場所。
下:「ずっと一匹オオカミ的だった僕が石巻に来て、あの瓦礫が片付いていくのを見て、仲間がいれば何でもできると実感。おかげで生きることが楽になりました」と田中さん。

SHOP DATA

店名 funade studio
住所 宮城県石巻市中央1丁目4−3
電話番号 0225-98-8683
営業時間 10:00〜18:00
定休日 無休
Webサイト http://funade311.com/

 市内の高台にある日和山公園から眼下を見下ろすと、工事現場も多く、まだまだ復興途中の石巻。しかしそこに暮らす人々は、それぞれの立場で強く、しっかり未来を見据えてチャレンジを続けています。そんな人たちの明るさに触れたなら、きっと私たちの方こそ元気をチャージさせてもらえそう。ぜひ機会を見つけて石巻を訪ねてみてください。

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上:日和山公園へ続く急な坂を軽快に上るフィアット500。
下:日和山公園から「マンガッタン」を望んで。