ゆっくり生きよう・にっこり走ろう

人にも環境にも自分にも優しくいきる。それがフィアットカルチャーです。

捨てるはずの空き瓶を、世界でひとつのフラワーベースに -RARI YOSHIO-

生活に寄り添う作品を!

「ニットのボトルを作り始めたのは、10年以上前です。市販のフラスコを編みくるんだらかわいいだろうなーと思って、やってみたのが最初。でもそのうち、わざわざ買わなくても身の回りには空き瓶がたくさんあるな、と思ったんですね。リサイクルもいいけれど、それはそれでエネルギーとお金がかかるでしょう?編んでリユースするほうが効率的だし、素敵じゃないかなって。お酒でも調味料でも、そういう目線で見ると、けっこうかわいいんです。そのうち、瓶のカタチでお酒を選ぶようになったりとか」

そう言ってほほえんだ、RARI YOSHIOさん。イラストをはじめ、空間プロデュース、ショップのプランニング、スタイリング、商品のデザインなどを幅広く手がけ、自らも「生活に寄り添う作品」の数々を生み出しているクリエイターです。

繊細なラインでシンプルに表現されるRARIさんのイラスト。自身の著書に登場したり、ポストカードやカレンダーといったグッズ、商品の広告キャラクターとして知られるほか、病院の壁に描かれるなど、その世界観は広く愛されています。
那須の暮らしで集めた身近な植物を額装した作品。「私が感じている植物の美しさを、作為的でなくナチュラルに表現しました。この作品の主役はあくまでも植物であり、私の役割はそれを見せるところまで。見てくださったお客さんと植物との関わりを大切にしたいと思って」

身の回りにあるものを、より美しく!

 RARIさんの作品は、最先端の素材や技術を活かして作られる流行の服や、奇想天外なアート作品などとはまったく違った、RARIさんだけの世界観をまとっています。初めて見る作品のはずなのに、それをもし持ち帰ったら、日々の暮らしにすうっとなじみ、その場の空気までも美しく変えてくれそうな予感を抱かせるのは、RARIさん自身が「暮らしに寄り添うモノ作り」をしているからなのでしょう。

RARI YOSHIO/SAZABYとet vousでハンドバッグ・デザイナーとしてキャリアを積みながら、ショップのプランニングやディレクションにも携わった後、「自分にしかできないモノ作りをしたい」とフリーランスのクリエイターに。海岸沿いの逗子から緑豊かな那須に移り住んで5年、ご主人とともにハーブや花を育て、アトリエ兼ショップの「JARDIN BLANC」を営みながら、那須と東京を中心に幅広く活動する日々。

ニットボトルはいまやライフワーク、というRARIさん。最初の展示では市販のフラスコを編みくるんだものだけを販売し、リユースのニットボトルはディスプレイとして飾っていたといいます。「でも、それを見て「ほしい」と言ってくださるお客さまが多かったんですね。あ、リユースのボトルでもちゃんと作品として見ていただけているんだなとわかって」

捨てられるはずだった空き瓶が、こんなにも素敵に。形も大きさもさまざまなニットボトルをたくさん並べて、季節の生花や自分で作ったドライフラワーを活ける。そんな楽しみ方を教えてくれたのも、RARIさんでした。誰かにお花をあげるとき、自分で編んだニットボトルと一緒にプレゼントすれば、相手の喜びは倍増するはず。
 
そもそもRARIさんのモノ作りは「身の回りにあるものを活かし、元の姿よりさらに美しく」という想いに支えられています。「バッグデザイナーをしていた頃は、シーズン毎に新しいデザインを提案していました。自分がいいと思うものは変わらないのに、それを作り続けることはできないんですよね。新しい素材を開発しては、違うデザインを生み出していく。それまでのデザインがなかったかのように、それこそゴミのように捨てられていくことに疑問を感じてしまって。私がデザインしたいのはこういうことじゃないって思ったんです。

「ほら、たとえばこれも」と見せてくれたガラス瓶の中には、かわいらしく切り取られた紙やフェルト。「洋服やバッグを買うと、質感のいい薄紙で包まれていますよね。お店でもらうショッピングバッグも、捨てるにはしのびない紙だったり。ただ取っておいても結局は捨てることになっちゃいますけど、モチーフを決めて型紙を作っておくと、それに合わせて切るだけで、ひとつの作品になるんです」捨てる運命にあった包装紙や紙袋も、なるほどこうして蝶々や葉っぱ、花などにカタチを変えれば、瓶に入れておくだけでかわいらしい。両面テープを使えば、グラスや紙コップや壁に貼ったり、ギフト包装のちょっとした飾りにも使えます。

包装紙で作ったフラワー。用済みのモノにこうして手を加えることで全く違った魅力を持つのだと実感させてくれる、すばらしい出来映えです。「一度使った包装紙のほうがシワが寄っていて表情が出ます。簡単なので、楽しみながら手早く作って、ギフトの飾りにしたりカーテンにつけたり、ワンデーコサージュにしたり」

 

自分のスタイルで作品を!

 
RARIさんはこれらの作品を「できるだけ多くの人に広めたい」と語ります。ゴミを増やしたくないという想いを、そうやって実現させているのです。たとえば東京・恵比寿にあるフラワーショップ「kusakanmuri」では、フラワーアレンジのほか、ハンドメイドのレッスンも定期的に開いていて、紙袋で作るペーパーガーランドやニットボトルも丁寧に教えてもらえます。

庭で育てた植物、ドライにした木の実、海岸で拾った石、丁寧に集めたたんぽぽの綿毛など、自然界にあるものや、暮らしの中で出会う身近なものを美しく見せてくれるJARDINBLANCの店内。ウサギ年のRARIさんらしい置物や、これから手がける作品のための素材なども細々と置いてありますが、ぶれない統一感はさすがです。

「たとえば包装紙で作る花にしても、もっと作り込むことはできますが、あえてシンプルに仕上げて、誰にでも作れるようにしています。ニットのボトルもね、マネして作ってもいいですか?とよく聞かれるんですけど、もちろん作っていただきたいです。瓶や糸の選び方、組み合わせ方は、やっぱり私独自の視点だから、私の作品は私の作品として、変わらず存在していけると思うのです。でも、それを買っていただくだけじゃなくて、それぞれの人のスタイルで、どんどん広がってほしいなって。編み物が初めての方は難しそうに思われるかもしれませんが、大丈夫。小さな瓶ならすぐに編めるし、編み方に決まりもないから、一度できるようになれば、楽しくてどんどん作品が増えちゃいますよ」

取材当日も、「包装紙のお花、作ってみる?」というRARIさんのひと声で、ワークショップが始まりました。こんな風に、那須のJARDIN BLANCを訪れたお客さんに簡単な作品をその場で教えてくださることもあるそうです。なんて幸せなひととき!

RARIさんの作品は、那須のJARDIN BLANCで買えるほか、9月26日から10月9日は、新宿伊勢丹・3FのPRIME GARDENにて、個展「BLANC D’HIVER ブランディヴェール
(フランス語で白い冬)が開催されます。蜜蝋のキャンドル、手織りのマフラー、草木染めのリネン糸、ハンドメイドバッグ、そしてもちろん、ニットのフラワーベースも販売されます。RARIさんが提案する「白い冬」を、ぜひご覧になってみてください。

RARIさんの著書。どの本にも彼女らしさがただよっていますが、中でも2004年の初出版作「SIMPLE NOTE」は、通常パソコン上で行われるデザインをすべてRARIさん自ら手作業で行ったという秀逸な一冊。「私が表現したい世界は手で仕上げないと難しい部分が多くて。それを出版社の方が理解してくださって、指定の原稿用紙にすべて手書きで指示を入れて、入稿したんです。大変でしたけど、楽しかったし、おかげで私らしい表現ができたと思っています」

 
RARIさんの作品に触れると、「身近なものを活かして美しいモノや空間を作りたい」という想いがこちらにも伝わってきて、「何か作ってみようかな」という気持ちにさせられます。それはとても貴重で、幸せな気持ちの変化のように思えました。

RARIさんは今後も、自分にしか表現できない創造力と、それを多くの人と共有してくれる優しさとで、決してぶれることのない彼女だけの世界を展開してくれることでしょう。

JARDIN BLANC
栃木県那須郡那須町高久丙4682-8
0287-77-1513
11:00〜18:00
※不定休ですので、HPか電話でご確認のうえ、お越しください。

撮影 SHIge KIDOUE
取材・文 山根かおり

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