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福島からサッカー日本代表を FUKUSHIMA MIRAI CUP

■輝きをもっと

FUKUSHIMA MIRAI CUPは、福島から日本代表を輩出することを目標に行われる中学生のサッカー大会です。といっても、選手の技術面をひたすら磨き上げるスパルタ的なものではなく、サッカー少年に活躍の場を提供し、仲間と同じ目標に向かっていく喜びを実感してもらい、プレイそのものだけでなく運営にも多少なりとも関わってもらう、そんな自立性のある環境づくりを目指しています。

高校サッカーともなると実力のあるスター選手が誕生してきますが、中学サッカーは、必死にがんばっている子が光ってみえる世界です。その輝きをさらに増やそうと、今回の大会はなんとゲストに元日本代表の前園真聖氏を招いて行われました。試合は1年生と2年生で分かれて行い、リーグ戦を勝ち抜いたチームは前園氏率いるドリームチームと対決できるという、サッカー少年にはたまらないご褒美が用意されています。子供たちは必死にこの学校対抗のリーグ戦に挑みます。

前園さんに中学生との試合前の感想をうかがってみると、「試合ですから、やるからには真剣に取り組みます」ときっぱり。その姿には、数々の試練を乗り越えていた一流選手特有のオーラが漂います。こんなスター選手と試合できるなんて、うらやましい……。

FUKUSHIMA MIRAI CUPの応援に駆けつけてくれた元サッカー日本代表の前園真聖さん。現在はテレビや雑誌で活躍する傍ら、次世代の育成に積極的に取り組んでいます。

■仲間と集まってサッカーがしたい

LINKtheSKY主催のFUKUSHIMA MIRAI CUPは、福島県内の中学校やサッカーチームが参加し、1チーム5人のフットサル形式で行うリーグ戦。会場となる相馬光陽サッカー場は、天然芝のコートと人工芝のコートをあわせて6面の広さを誇る充実ぶり。被災地にサッカー少年&少女の活躍の場を、との想いから、国際サッカー連盟FIFAをはじめとする企業や団体からの支援により、2012年10月に開設されたフィールドです。

LINKtheSKY代表理事の新井幸子さん。震災直後から子供たちの成長を見てきました。当初は被災してばらばらになってしまった子供たちにサッカーのできる場を提供することに尽力していましたが、いまでは大会が恒例行事となり、参加者の数も増え、次なるステージへ。日本代表の輩出を目指し、イベントの運営やスポンサー活動などに東奔西走しています。

FUKUSHIMA MIRAI CUPも、復興支援の一環として有志からのサポートを得て始まっています。現LINKtheSKY代表理事の新井幸子さんは震災直後に物資支援で福島をたびたび訪れた際に、彼女に徐々に心を開いていった子供たちから「また仲間と集まってサッカーがしたい」と本音をこぼされたのがきっかけとなり、その希望をかなえようと立ち上がりました。LINKtheSKYを創設し、企業や団体から支援・協力を集い、2013年1月にFUKUSHIMA MIRAI CUP第1回目が実現しました。努力の甲斐あって今大会は5度目を数え、恒例行事となりつつあります。

FIATも福島から未来の日本代表を輩出しようとするこの活動に賛同し、サポートをしています。前園氏のユニフォームの背中に縫い付けられたFIATロゴには、次世代を担う子供たちへの応援の気持ちが込められています。

■母校を強くしたい

さて、FUKUSHIMA MIRAI CUP、学校の対抗戦ということでどのチームも勝利への期待を胸に挑んできます。中学校のチーム監督や保護者の方にお話しをうかがうと、FUKUSHIMA MIRAI CUPは1年生にとっては初の公式戦ということで、大きな晴れ舞台として位置づけられているようです。

1年生の部でリーグ戦を勝ち抜いた尚英中学校の選手と監督。

すでに期待のホープも登場しています。開設当初は中学生だった子も今では高校生。ちょうどこの日、中学生時代から新井さんと顔見知りの高校生選手が隣のグラウンドでサッカーをしていたので話を聞いてみました。相馬高校の木下迅人(はやと)さんです。お兄さんの影響でサッカーをはじめたという木下さんは、「サッカーは生活の中心で、何よりも大事」と話してくれました。将来の夢を聞くと「中学生の時に悔しい思いをしたので、中学校の先生になってサッカーを教えたい。できれば母校の先生になってチームを強くしたい」と答えてくれました。しっかりと目標をもってサッカーに打ち込んでいるようです。

相馬高校の木下迅人さん。震災直後は外にいられる時間が2時間までと制限のあるなかでプレイしていましたが、「いまは自由にサッカーをやれる環境をつくってもらえてうれしい」と話してくれました。

■1年の成長

さて、そろそろ優勝チームと前園氏率いる大人チームの試合開始です。リーグ戦を勝ち残った1年生チームは、尚英中学校。2年生は中村第二中学校です。対する大人チームは、前園氏のほか、LINKtheSKYのスタッフで社会人フットサルのプレイヤーばかり。気合たっぷりでかなり手強そうなメンバーです。

大人チームの顔ぶれ。前園氏はもちろんのこと、他のプレイヤーも普段からフットサルをやっているとあって余裕満々の表情。なかには海外でサッカーをしていた選手も。

まずは尚英中学校1年生と大人チームの試合。中学生選手たちはボールを奪おうと必死に走りますが、大人チームのガードは固く、なかなか点を決められません。もちろん前園氏も、手加減はしてくれません。とはいえ前園氏は、常に中学生にかけ声をかけ、ゲームのアドバイスをしています。なるほど前園氏のいう“真剣に取り組む”とは勝負への執着だけでなく、サッカーの先輩として、できる限りのサポートをするということのようです。さすが元日本代表。結果は、大人チームの勝ち。中学生チームには来年はぜひリベンジを期待したいところです。

前園氏からボールを奪おうと必死の選手たち。しかし複数の選手に取り囲まれても巧みな足さばきで相手にボールを渡しません。

次は中村第二中学校2年生との試合。キックオフは中学生チームです。なんとホイッスルとほぼ同時にロングシュートを決め、先制点を取りました。これには大人チームも苦笑。これで試合に火が付き、大人チームは積極的に攻めていきます。まずは同点に。そして逆転シュートを決めますが、中学生も追加点をあげます。さらに大人たちもシュートを……。白熱した攻防を繰り広げ、最終的に大人チームが勝ちました。

2年生の部でリーグ戦を優勝した中村第二中学校の選手。前園氏の左の選手は試合開始直後にシュートを決めた高村くん。前園氏の右側は大人チームからの数々のシュートを防いだキーパーの佐藤くん。

プレイを見ていて、1年の成長の大きさを感じました。1年生と2年生では体つきが違うのはもちろんのこと、勝負に対する気迫やゲーム運び、仲間との連携など、メンタルな部分での成熟度の差のようなものを感じました。真剣にサッカーに打ち込むと1年でグッと上達できる、ということでしょう。こうして日々の成長の成果を見極められるのも試合の醍醐味。公式戦を戦うことの大切さを実感します。

■自分がやりたいことを真剣に

最後に前園さんが選手たちにメッセージをくれました。
「すばらしい環境のなかで今日1日、子供たちがサッカーに一生懸命、そして楽しく取り組んでいる姿を見られたのが良かったです。最後は選手たちと一緒に試合をしましたが、真剣に向かってきてくれたので、清々しい気持ちになれました。でも相手が年下でも勝負は勝負。しっかり勝負にこだわってやるのが僕のモットーです。子供たちに伝えたいことですか? そうですね、将来、サッカーのプロを目指すもよし、別のことを目指してもいいけれど、大事なのはいまこの瞬間に、自分がやりたいことを真剣にやることだと思います」。

将来の日本代表を輩出するには、1年生の子たちは来年には今の2年生を超えていなければならないし、2年生は次なる目標に向けてさらに突き進んでいく必要があるでしょう。前園さんとの試合をよき思い出に羽ばたいてほしいものです。

取材・文 曽宮岳大